~野球人に生まれて~

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松坂大輔投手の投球フォームについて

 本日は、私の子供のころからの大スター、松坂大輔投手の投球フォームについて私なりの見解をまとめたいと思います。

 

 言わずもがなではありますが、松坂大輔投手について軽く紹介します。高校時代には全国屈指の強豪校横浜高校に在籍し、3年時に甲子園春夏連覇を達成。その後、ドラフト1位指名で西武ライオンズに入団。1年目にいきなり最多勝を獲得し、以後ライオンズでの8年間で108勝をあげた「平成の怪物」。2007年に海を渡り、米メジャーリーグの名門ボストン・レッドソックスでも活躍した、2000年代を代表する投手の一人です。

 

 ただし、現役時代の後半(2009年以降)では主に肩・肘などの度重なる怪我に苦しみ、思うような成績を残せないシーズンが目立ってきました。特に肘のトミージョン手術を行ってからは明らかに球速が落ち、変化球の多投やムービングファストボールの使用など、ピッチングスタイルにも変化が見てとれるようになりました。

 

 投球フォームに関しても、20代の頃は正統派のワインドアップで上から投げ下ろす理想的な投球フォームとして紹介されていました。私自身もよく真似をしていましたし、現在ロサンゼルス・エンジェルスで活躍する大谷翔平選手も真似したと言っていましたね。

 

 様々な痛みを経験する中で変化していった投球フォームでしたが、見る者を魅了した松坂投手の投球フォームにはどのような特徴があったのでしょうか。

 

 1999年~2006年までに西武ライオンズで活躍していた頃の松坂投手のストレートは、ホップするような球筋が特徴的でした。松坂投手のストレートは、ボールの回転軸が限りなく地面と水平になっていたことで、あの球筋を実現していました。要するに、限りなく真っすぐに近い回転になっていたということです。ボールの回転軸が地面と水平に近づけば近づくほど、ボールのホップ成分が向上し、より浮き上がって見える球筋となります。

 

 このようなストレートを実現していた松坂投手の投球フォームは、左足が着地してトップが形成されてからの左肩甲骨の内転による左肩のリードが秀逸でした。上体の回転は、リーディングアーム(非投球腕)側の肩甲骨の内転によるリードで、投球腕側の肩や腕が遅れて引き出される動きが大切です。松坂投手の場合、このリーディングアーム側のリードにより左肩を十分に引き下げられていた為、体軸を傾けて骨盤を斜めに回転させ、右肩及び右腕をより真っすぐに投球方向へ引っ張り出してくる動きが秀でていました。

 

 このような左肩のリードによる上体の回転を行えていた為、いわゆる縦回転のスイングを行うことができ、結果として綺麗な縦回転のストレートが投げ込めていました。現役投手で同様のメカニックを有している投手といえば、左右は異なりますが楽天イーグルスで活躍する松井裕樹投手が思い浮かびます。

 

 ただし松坂投手はその後、米国MLBへ移籍しますが、度重なる故障に苦しみます。様々な痛みを経験する中で、投球フォームにも変化が表れてました。年齢を重ねて体が変化したこともあると思いますが、一番の変化は先ほど解説したリーディングアーム側のリードによる上体の回転がスムーズに行われなくなり、上体の回転が横振りになって右肩や右腕が遠回りするようになっていったという点です。

 

 その為、ストレートの回転軸が地面と水平から傾いていってしまい、ホップする球筋が無くなっていったという印象です。

 

 しかしながら、中日ドラゴンズに移籍した2018年に6勝を挙げカムバック賞を受賞した際は、見事にモデルチェンジに成功。カーブやチェンジアップなどの変化球を多投することで緩急を生かし、ストレートもカット気味もしくはツーシーム気味の球筋が増え、打たせて取る技巧派への転身を成功した姿は、やはり見事というべきピッチングでした。

 

 松坂投手が現役後半に故障で苦しんだ原因の一つには、明らかに若いころの酷使があったように感じます。特に、速い球を投げる投手程、その体には負担が掛かってくると考えます。現在の野球界では、球数管理や登板間隔の配慮などが一般的になり、昔ほど酷使される状況ではなくなってきました。

 

 野球界は、体を痛めて泣く泣く野球を断念したという人間が多く、私自身も現在の野球界の風潮には賛成です。子供は「いけるか」と聞けば大抵「いける」と答えます。これからの野球界を担う子供たちを預かる指導者には、その自覚を持って子供たちの体を管理する義務があります。