~野球人に生まれて~

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昨今の野球界における球速向上について ~速い球を投げるには~ 〈補足編〉

 先般、千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手が自身二度目の165kmをマークしたとのニュースが飛び込んできました!!若干21歳にて溢れる才能!!是非今後も順調に伸びていってほしいですね!!

 

 前回までの記事では速い球を投げる為に必要な「体全身を効果的に使って投げる投球動作」について解説してきました。速い球を投げるには解説してきたような「体全身を効果的に使って投げる投球動作」が必要不可欠ですが、球速を決める要因にはどのような要素があるのでしょうか?

 

 物理的な話をすると、「ボールに加えられるパワー(W 仕事)=距離(S)×力(N)」となります。要するに、可能な限り強い力を長距離に渡って掛け続けられれば、それだけ速い球が投げれるということになります。

 

 「体全身を効果的に使って投げる投球動作」が実現できれば、上体や肩の力ではなく下半身や体幹の力を有効に使って投げることとなるので、自然と大きな力(N)をボールに加えることができます。

 

 一方、距離(S)に関してはどうでしょうか。結論から言うと、距離に関しても「体全身を効果的に使って投げる投球動作」を実現することで、最大限のパフォーマンスを引き出すことになります。ここで言う距離(S)とはボールの加速距離であり、トップの位置からリリースまでにボールが移動する距離のことになります。基本的にこの距離を長く取れる投手程、速い球が投げやすいことになります。

 

 では、ボールの加速距離を長くとるためには、具体的にどのように投げれば良いのでしょうか?

 

 以前の記事での説明では、踏み出し足(右投手なら左足)が投球方向へ着地した際には、胸と骨盤は3塁方向(左投手は1塁方向)を向いていなければいけないと述べました。いわゆる「開いていない」投球動作の実現ということになりますが、なぜこれが重要なのでしょうか。

 

 「体全身を効果的に使って投げる投球動作」では、骨盤と体幹部(上体)の回転によって投球腕が自然と投球方向へ引き出されてくる動作が求められます。なので、踏み出し足が着地した際に骨盤と胸が3塁方向(左投手なら1塁方向)を向いていないと、その後の体幹部の回転に必要な回り代が無くなってしまうからです。

 

 そしてこの「開いていない」投球動作は、ボールの加速距離を長くとるためにも非常に重要です。単純に、踏み出し足が着地したタイミングで骨盤や上体が投球方向を向いていてしまった場合、投球腕のトップの位置が非常に浅くなってしまうため、リリースポイントまでの距離が稼げないからです。

 

 これは、頭が投球方向へ突っ込んだ形の投球動作でも同様です。よく「突っ込んでいるぞ」と指導を受けることがあると思いますが、正確には頭の位置が骨盤よりも投球方向へ動いてしまっている動作を指します。これら、いわゆる「突っ込んだ」投球動作においても、「開きが早い」投球動作と同様にトップが浅くなり、トップからリリースポイントまでの距離が稼げません。

 

 まとめると、「開きが早い」「頭が突っ込んだ」投球動作では、トップからリリースポイントまでの加速距離を稼ぐことができないため、速い球を投げることができないということです。これを回避するには、下半身は「軸足股関節をお尻側に引き込む動作を起点としたヒップファーストの体勢で投球方向へ移動していく」ことが求められ、上半身は「非投球腕側の肩甲骨を外転させて、非投球腕側の肩越しに投球方向を見る体勢のまま踏み出し足着地まで投球方向へ移動する」動きが必要となります。

 

 また、ボールの加速距離を長くとるためには、投球腕側肩の外旋角度の深さも大切な要素となります。いわゆる「腕のしなり」の利いたスイングができるかどうかということです。

 

 球が速い投手の腕の振りは、いわゆる「腕のしなり」が利いたしなやかなスイングだということは、なんとなく見ていれば感じることが多いと思います。物理学的にもそれは理に適っていて、トップの体勢から、骨盤や体幹部(上体)の回転によって遅れて投球腕が引き出されてくることによって、慣性の法則により投球腕や肩には自然と外旋の力が加わります。この時に肩回りの関節の可動域が広い選手は、より深く外旋の角度を取れるため、体幹部の回転が深く進んでいった段階でもギリギリまでボールを後ろ(2塁側)に残しておくことができます。つまり加速距離を限界まで取れるということです。イメージとしては、輪ゴムを最大限まで引っ張ってから離した時の動きに似ています。

 

 ここまで、速い球を投げる為の、トップからリリースポイントまでの加速距離を長くとる投球動作について話をしてきました。私の話は、全て以下に紹介する前田健氏の著書に基づいております。努力する選手が、才能のある選手と互角に競い合える野球界の実現に向けて活動しています。興味がある方は、以下前田健氏著書「ピッチングメカニズムブックメカニズム」もぜひ読んでみてください。